こだわりの製法

昭和40年、東京での寿司職人修業中、寿司ネタとして使っていた玉子焼きとの衝撃的な出会いがありました。

何とかその味を自分でも作ってみたいと、試行錯誤を繰り返した末、研究のために訪れた築地で見た、玉子焼き職人の鮮やかな手さばき。鍋に流し込んだ卵液を菜箸でぐるぐるっとかき混ぜて、くるくるっと回して作る焼き方。
これこそが、今も大切にする、ふっくらとした玉子焼きを作る一番肝心な工程なのです。

創業当初は、店主がひとりで6つ鍋を同時に操って焼いていましたが、注文が増加し、製造が間に合わなくなってしまったために、現在では、一定の間隔で卵液を鍋に入れる段階などで機械化を取り入れています。しかし、玉子焼きの食感を決める一番肝心な作業は、頑固に手作業を貫いています。

職人たちが左右の手に箸を持ち、2つの鍋を同時に、均等にかき混ぜます。左右同じようにきちんとかき混ぜるのはコツがいりますが、常にかき混ぜることで、玉子焼きの中に空気が含まれていきます。
玉一の玉子焼きを切った時に、断面に見える、いくつもの細かい穴。これこそが、微妙な食感を生み出す秘密なのです。

保存料、混ぜ物なしの自然素材しか使わず、いつ食べても変わらない味を保つため、守り通していることがもうひとつあります。
それは味付けの基本となる、出汁のとり方。玉一では、店主が信頼するひとりの職人が、材料の配分を精密に量って、毎日、丁寧に作っています。

食べた後30分ほどして、ふと「また食べたいな」と感じる余韻。
出汁という基礎をきちんとしておくことで、玉一の玉子焼きを食べていただいた皆さまに、この余韻を感じていただければ、嬉しく思います。

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